ある日ライオンは

自分の周りが妙にあわただしいことに気がついた

人間たちはいつもと違う顔になり

ひらひらした不格好の変な服を着ていた

人間たちはライオンの毛並みを丁寧に整え

赤や緑や黄色などイロトリドリの色で

ライオンを着飾った

そう

今日はライオンの初舞台の日だった

見せ物小屋には緊張感が走り

ヒゲに電気が走ったようにビリビリしていた

小屋の中は今までに聞いたことのない不思議な音が鳴り響き

それがライオンをよりいっそう不安にさせた

けれどライオンはそんな不安な姿を誰にも見せなかった

百獣の王としての誇りを胸に抱いていたから